上毛新聞「視点オピニオン21」第4回

 2017.4.23上毛新聞「視点オピニオン21」第4回

医療通訳の普及 利用しやすい体制急務

                 群馬の医療と言語・文化を考える会副代表 原美雪

 前回「動脈」は英語で何と言いますかとお尋ねしました。当然のことですが医学用語は学ばなければ身につきません。コミュニティーで活動する場合にも、医療通訳者は命や健康にかかわる医療の場で、時には仕事を休んでも対応するという活動の重みを感じています。日頃から医学や言語に加えて医療通訳者の倫理や適切な対応を学ぶ必要もあり、専門職としての覚悟が必要です。診療の場を混乱させることなく臨機応変に文化や言語の橋渡しをするため、経験や研修も大切です。

しかしながら、社会的認知度はまだ低く、医療通訳を業とする方とは比較にならない待遇で活動をしています。

当会は、群馬県共同募金会、中央ろうきんから助成金をいただき①医療通訳制度普及のためのシンポジウムや多職種連携講習会の開催②専門職としての医療通訳者が群馬県で育つことを目指したコミュニティー通訳者養成講習会開催③言語グループの学習体制整備支援―をしています。

さらに、昨年度は患者や医療機関の皆さんが医療通訳を利用しやすい環境をつくるため、医療通訳者の試用無料派遣を行いました。医療通訳者が社会で必要とされる件数やその現状を把握するためでした。昨年4月から本年2月までに180件の依頼を受けました。高崎、太田、前橋、伊勢崎、藤岡、桐生、足利などの医療機関において、中国語、スペイン語、ポルトガル語、英語、タガログ語、ネパール語、インドネシア語、フランス語、ロシア語など多様な言語で対応しました。

診療科は整形外科、産婦人科、内科、眼科、歯科、精神科など多岐にわたり、手術や入院になった方もいました。

派遣を通して①病院をいくつも回り、ようやく診断・治療につながったケース②難病や悪性腫瘍の患者など今後通訳費用の負担軽減が検討される必要があると思われたケース③一日がかりや夜間から夜中にわたるケース―など患者にも通訳者にも相当かつ適切な配慮が必要とされる現場を確認することができました。

外国の方の命や健康にかかわるコミュニティーの医療通訳の普及には、保険など解決すべき課題があります。社会の制度として県や市町村など行政、病院・診療所、国際交流協会、外国人支援団体、企業、市民が協力して体制を作る必要があります。関係方面が同じ机に座り、多角的に協議をすることが不可欠です。

厚労省や観光庁、経産省が進める病院の外国人受け入れ体制整備事業を地域につなげることも可能でしょう。

日本の人口減を背景に、外国人労働者の受け入れが進む中、現状や今後の推移も見極めながら、教育・医療等福祉予算と税収、医療通訳利用と医療経済など問題の本質を見極めながら、今地域で何をするべきかという議論が必要だと思います。


群馬の医療と言語・文化を考える会副代表 原美雪 前橋市三俣町

【略歴】東京都出身。東京外語大卒。外務省で在インドネシア大使館などに勤務。2013年に群馬の医療と言語・文化を考える会を立ち上げ、医療通訳の普及に尽力。

2017/04/23掲載

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です