上毛新聞「視点オピニオン21」第5回

 2017.6.13上毛新聞「視点オピニオン21」第5回

医療通訳者の派遣 「患者第一」最善尽くす

                群馬の医療と言語・文化を考える会副代表 原美雪

 今回は、当会の医療通訳者派遣サービスの運営の様子を皆さまにご紹介します。

昨年度、当会は医療通訳者の派遣を行い、180件の実績を上げたことは前回報告いたしました。本年4月からは、これまで群馬県が行っていた医療通訳ボランティア派遣のコーディネート業務をも請け負うことになりました。通訳者を派遣する場合は、医療機関や患者さんからの依頼を受けて、通訳できる人を探します。ほとんどの通訳者は仕事をもち、平日の昼間に自由に活動できる人を探すのは容易ではありません。現在100人を超える通訳者の登録がありますが、中国語、スペイン語、ポルトガル語という需要の多い言語はもちろん、ネパール語、ベトナム語などの希少言語の依頼も対応できる通訳者は少なく、中には全く対応できない言語の依頼もあります。

当会は、私を含め2人でこのコーディネートを行っています。今日、明日にも必要という依頼がある中、通訳者の仕事や家庭環境を理解し、希望も聞きながら病院からの依頼日時などの調整を行います。通訳者がいなければ診療は成り立ちません。依頼にはできるだけこたえるという方針で通訳者が見つからない場合には、電話をかけまくり、何時間もの時間を費やすこともあります。その間にも他の依頼、通訳者・医療機関からの報告、交通渋滞や家族の事情などで急に対応できなくなった通訳者からの連絡に対応し、新たに調整をし直す作業なども入ります。コーディネーター業務なしには派遣制度は成り立ちません。通訳者の事情、医療機関の環境、患者さんの病状や生活保護など社会的課題等全てを理解して流れを把握し、起こりうる状況を想定することが必要です。

その中で、常に忘れてはならないことがあります。それは、一番大変なのは病気やけがを抱える患者さんであり、その不安を取り除くために配慮すること、患者さんのために働く医療従事者の皆さんの頑張りを応援する気持ちを持つこと、そのみなさんのために尽くす通訳者にとって最善の環境をつくることです。

病院からの評価や通訳者からの報告をもとに、よりよい制度や環境をつくるため検討を重ねることも私たちコーディネーターの大切な仕事です。乳幼児健診など子どものために欠かせない診療と治療が続き通訳費用が払えず通訳を派遣できなかったケースがありました。利用回数が多い難病や慢性疾患の患者さんに負担が多くなることも胸が痛みます。結核の治療には投薬説明など十分な理解を得る必要がありますが、通訳費用について方針は決められていません。

課題をどのように解決に結び付けるのか、今後予定されている関係者が集まる検討会議で十分な議論が行われるよう、準備したいと思います。


群馬の医療と言語・文化を考える会副代表 原美雪 前橋市三俣町

【略歴】東京都出身。東京外語大卒。外務省で在インドネシア大使館などに勤務。2013年に群馬の医療と言語・文化を考える会を立ち上げ、医療通訳の普及に尽力。

2017/06/13掲載

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