上毛新聞「視点オピニオン21」第7回

上毛新聞掲載 2017.9.26上毛新聞「視点オピニオン21」第7回

医療通訳の道へ 壁のない社会目指して

                  群馬の医療と言語・文化を考える会副代表 原美雪

 医療通訳普及の活動を始めて6年近い時間が流れました。この世界に足を踏み入れた大きなきっかけがあります。それは6年前の東日本大震災です。

地震発生後まもなく東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターから一斉に卒業生の語学ボランティアのリンクに翻訳ボランティアを求める声掛けが行われました。被災地の国際交流協会が外国人居住者に震災情報を提供するためでした。

大学卒業後さび付いていた頭と、しまい込んでいた辞書を引っ張り出し、次から次に送られてくる震災情報、水道・ガス・電気、交通機関、避難所、医療機関、罹災(りさい)証明など必要とされるさまざまな翻訳と格闘しました。メール上でつながった国内外の卒業生や留学生がおのおの連絡を取り合いながら、計画停電や仕事の合間を縫って翻訳作業に取り組みました。

原子力発電所情報の翻訳や入国管理局からの依頼も入りました。事務局の皆さんのご苦労は大変なものであったはずです。多言語のボランティアがメール上でやりとりをする様子を見ながら、皆さんの力といざというときに結束できる強さに感動しました。

地域で日本語を母語としない方が言葉で困っている現状は災害時に一度に表面化します。その対応の可否は、平時の体制整備と日頃からの連携づくりなしにはあり得ません。外国人対応を特定の機関だけに任せる組織の縦割りのままでは機能しません。全ての機関、担当課が常に外国人対応をも心がけ、できることは何かを考える余裕が必要です。組織から個人、個人から組織という柔軟な双方向のやりとりが普段からできていることが大切でしょう。

私たちの会が医療通訳普及・通訳者派遣団体として多くの関係者と現在活動ができるのは、まさしく組織を超えた意識でつながってくださった皆さまのおかげでした。何の形もない活動の当初より支援をくださったD自動車ディーラー前社長の山崎様はじめ皆さま、前橋市市民活動支援センターや群馬県共同募金会、前橋市文化国際課など群馬県内で相談にのってくださった皆さま、全国で医療通訳普及をリードし、わずかの交通費で講習会やシンポジウムに駆けつけてくださった皆さまのお力なしには、到底ここまで来ることはできませんでした。心からのお礼を申し上げます。

皆さまからいただいたご厚意を大切に「言葉や文化の壁のない世界」を目指し、一人一人が元気に互いの力を発揮しあえることから生まれる大きな力を信じてこれからも活動を続けます。紆余(うよ)曲折の中で支えて下さった皆さんとの出会いが私にはかけがえのない宝です。活動の中で皆さんが幸せを感じていただけるよう、その活動から幸せになれる方が一人でも増えるようにと願っています。

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